両親とも亡くなって、主な遺産は、自宅と少々の預貯金だけ。
相続人は子(長男、長女)の2人という場合、どのように遺産を分割すればよいでしょうか。
不動産を売って、現金化するのであれば、公平性という観点では問題はないかもしれません。
現金ならば、すっぱりと1/2毎にすれば良いですから。
しかし、例えば長男が不動産を取得し、長女に相応の金銭等を支払う場合、不動産の価格(特に、一般的に価格が高い土地代)をいくらにするのか、しばしば問題になります。
不動産を取得する人は、他の相続人に支払う金額を抑えたいため、不動産価格を低く算定し、不動産を取得しない人は、不動産価格を高く算定する傾向が高いためです。
それでは、不動産価格の算定方法について、①実勢価格、②公示価格、③固定資産評価額、④路線価、⑤不動産鑑定評価額の5つを見ていきましょう。
①実勢価格
実際に不動産が市場で売買されたときの価格です。但し、実際に売買をするわけではないので、実勢価格を検討するためには、不動産会社等に不動産価格の見積もりを依頼することになり、会社により価格の幅が生じます。また、特に都市部では、月単位、時には週単位で金額が変動することもあります。価格の安定性・公平性という点において、留意する必要があります。
②公示価格
地価公示法に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示するものです。客観性は高いですが、実施個所はピンポイント(令和5年地価公示では、26,000地点)となり、相続において参考にすることは難しいでしょう。
③固定資産評価額
固定資産税の基準となる評価額のことです。各市区町村(東京都23区の場合は都)が算定するので、客観性が高いと言えます。3年に1度見直され、公示価格の70%の水準になるように調整されているのが特徴です。
固定資産税課税台帳登録事項証明書には、評価額の他、固定資産の所有者、不動産の所在地、登記地目又は用途・構造、登記地積(土地)、用途・構造・床面積(家屋)などが記載されています。
④路線価
道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額(千円単位)です。土地を評価する場合に用い、建物は対象外です。
⑤不動産鑑定評価額
国家資格を持つ不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に沿って、該当の不動産を鑑定・評価します。鑑定には数十万円単位以上の費用が掛かるため、主に家庭裁判所での遺産分割調停等で使用されることが多いようです。
以上、5つの価格についての特徴を簡単にお話しました。
不動産価格の算定には、固定資産評価額が、客観的で最も良いように思いますが、最終的には、相続人同士で話し合い、各人が納得することが重要です。