前回の記事では、「どこまでが相続人になるの?」「親が亡くなった時に葬式代を親の預貯金を使えるの?
等の身近な疑問についてお話しました。
ここでは、もう少し踏み込んで、相続の際に生じる疑問にお答えします。
質問1「お姉ちゃんは結婚資金として100万円もらったのに、私は貰っていない!これは相続金額を算出する際に考慮されないの?」
共同相続人の中に、被相続人から遺贈、婚姻等のために贈与、生計の資本としての贈与等を受けた人(特別受益者)がいる場合、公平性を期すため、遺産の額を計算するとき、特別受益者が得た価額を遺産に戻した上で算出します。(これを「持ち戻し」と言います。)
但し、被相続人が持ち戻し免除の意思表示をした場合はその意思に従います。
婚姻期間が20年以上の夫婦が、住んでいた家を相手方に遺贈又は贈与をした場合は、持ち戻し免除があったものと推定されるようになりました。
質問2「私は家業の工務店を手伝い、工務店の収益を大きく増加させた!このことは相続金額に考慮されないの?」
共同相続人の中に、被相続人の財産の維持・増加に貢献した人がいる場合、「寄与分」が考慮されます。
寄与分が認められると、相続財産から寄与分を除いたものが相続財産とみなされます。
なお、相続開始から10年を経過した後の遺産分割(10年以内であっても遺産分割合意成立後)については適用とならない点に注意が必要です。
質問3「私は、義理の母の面倒を無償でしてきた!相続の際に考慮されないの?」
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができるようになりました。
但し、相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、請求できなくなりますので、注意しましょう。
質問4「父は財産を残してくれたけど、借金もしていたと聞いている。どうしよう?」
相続人は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続の放棄、限定承認、単純承認しなければなりません。
相続の限定承認をしようとする人は、相続財産の目録を作成し家庭裁判所に提出し、相続放棄をしようとする人は、相続放棄することを、家庭裁判所に申述しなければなりません。
この期間内に限定承認も相続の放棄もしなかった場合、財産の全部または一部を処分したときなどは、単純承認をしたとみなされます。
なお、相続開始前になされた相続の承認・放棄は、無効となります。
質問5「夫が亡くなりました。財産は家と土地の他、少々の預貯金です。この家には住み続けたいですが、生活費のための預貯金も必要です。2人の子どもとどのように分ければよいのでしょうか」
配偶者の権利として、「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」が設けられました。
配偶者居住権は、一定の要件を満たす場合、相続開始時に居住していた建物に無償で住み続けることができる権利です。所有権に基づいて建物を取得するのと比べ、評価額が低く設定されることで、他の財産もより多く取得することができるというメリットがあります。但し所有者の承諾がなければ、増改築や第3者への使用・収益ができないなどの制約があります。
この権利は、原則として配偶者が死亡するまで存続します。
他方、配偶者短期居住権は、配偶者が相続開始時に居住していた建物に、遺産の分割がされるまでの6か月間、無償で住み続けることができる権利です。
質問6「父が亡くなりました。財産の全てを生前交流のあったAさんに与えるという遺言がある場合、私は少しももらえないの?」
法定相続人のうち「配偶者・子・直系尊属」には、最低限保障される遺産取得分が権利として認められる、遺留分制度があります。
直系尊属のみが相続人の場合、法定相続割合の1/3、配偶者・子の場合1/2の権利が保障されます。
兄弟姉妹に遺留分はありません。
遺留分の請求は、金銭の支払いの請求に留まり、物権には及びません。相続の開始及び遺留分を侵害する贈与があったことを知った時から1年を過ぎると、時効により消滅します。
以上、相続に関してのポイントについてお話いたしました。
他にも注意点等がありますので、ご不明な点がありましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。